導入
「もし、自分の子供が取り返しのつかない罪を犯したら……あなたは親として、何をしますか?」
今回ご紹介する『赤い指』は、東野圭吾氏の「加賀恭一郎シリーズ」の中でも家族の秘められた思いや苦難や絶望、しかし最も深く心に刺さる家族の物語です。 阿部寛さん演じる加賀が追うのは、単なる殺人事件ではありません。それは、一つの家庭が少しずつ壊れていく過程と、その裏に隠された「家族の愛」がテーマのスペシャルドラマになっています。
観終わった後、あなたは自分の家族の「本当の姿」を考え直さずにはいられなくなるでしょう。
あらすじ:平凡な家庭に起きた「最悪の事態」
どこにでもある平凡な家庭、前原家。しかしその内情は、認知症の母、いつからか口も聞かなくなってしまった家族関係。
そんな家庭に帰ることを躊躇していた夫の昭夫の元に電話をかけてくることもない妻、八重子から着信があります。
「とにかく帰ってきてほしい」
嫌な予感を胸に昭夫は自宅へ戻ります。そして、彼は自宅の庭で倒れている見知らぬ少女の遺体を発見します。そして、それには息子の直巳が関わっていました。
息子が犯した罪を知った昭夫と妻の八重子は、自首をさせるのではなく、ある「最悪の選択」をします。彼が家族を守るためにとった行動とは?
そして、少女の事件を担当することとなった加賀恭一郎。加賀は、昭夫たちの不自然な様子から事件を解いていくとともに家族の中に隠された「もう一つの真相」を静かに手繰り寄せます。
ちなみにこの話は加賀恭一郎が人形町に赴任する2年前の話となっています。
ここが凄い!3つの見どころポイント
① 「共感」と「嫌悪」が入り混じる心理戦
「家族を守りたい」という親の気持ち。しかし、その守り方が間違っていることに気づきながらも止まれない昭夫の姿は、観ている側に強烈な嫌悪感と、どこか他人事とは思えない恐ろしさを感じさせます。この「負の感情」を煽る演出が実に見事です。
② 阿部寛と山﨑努による「父と子」のサイドストーリー
本作のもう一つの軸は、加賀恭一郎自身の父親(山﨑努)との関係です。死の間際にある父をなぜ加賀は見舞わないのか? 事件の捜査と並行して描かれる加賀家の物語が、事件の核心である「親子・家族」というテーマと鮮やかにリンクしていきます。
③ 衝撃のラスト「赤い指」の意味
物語の終盤、加賀が仕掛けた「ある罠」によって、昭夫たちは自分たちが犯した罪の重さと、自分たちが切り捨てようとしていたものの正体を知ることになります。タイトルの『赤い指』が意味する衝撃の真実。ラストシーンのの阿部寛さんの追い込みは、涙なしでは観られません。
筆者の正直な感想(レビュー)
観終わった後、すぐには言葉が出ませんでした。 この物語に登場する家族は、決して特別な「悪人」ではありません。どこにでもあえる、少しだけボタンを掛け違えてしまっただけの平凡な家族です。だからこそ、息子を守るために嘘を重ねる両親の姿が、他人事とは思えず、胸が締め付けられるほど苦しかったです。
特に考えさせられたのは、「子供をただ守るだけが、本当にその子の人生を救うことになるのか?」という問いです。 子供の罪を認めず・見ようともせず守ろうとすることが本当に子供のためなのか、そして本当に守ろうとしているのは子供なのかと見終えて自問する余韻に浸りました。
ラストシーン、事件の核心である「赤い指」の正体が明かされたとき、そこにあったのは絶望ではなく、あまりに不器用で、孤独で、でも確かな家族の愛でした。 「家族だからこそ、罪を認め正しくあるべきだ」という、厳しくも温かいメッセージが、観終えた後の私の心に深く、静かに残り続けています。
まとめ:こんな人におすすめ!
『赤い指』は、ミステリー好きはもちろん、すべての人に一度は観てほしい傑作です。
- 人間の心の奥底にある「弱さ」を描いた物語を読みたい人
- 加賀恭一郎の、冷徹さと優しさが同居する捜査を堪能したい人
- 家族との向き合い方に、少し立ち止まって考えてみたい人
華やかな謎解きはありません。ただ、一人の刑事が一人の人間に向き合う「家族愛の記録」を、ぜひ最後まで見届けてください。



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